発達障害って聞いたことありますか?近年は耳にする機会も増えてきたかもしれません。今回はその中の1つである自閉スペクトラム症(ASD)について説明します。
自閉スペクトラム症(ASD)って?
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder : ASD)は「神経発達症」のひとつです。主に「対人関係や社会的場面でのコミュニケーションの問題」「限定された興味関心とこだわりの強さ」を特徴としています(1)。こうした特徴により、社会生活に支障が生じている方がASDとされています。国内では3%以上が診断基準をみたすとも言われており(2)、珍しくない状態です。
名称について、以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などと呼ばれていました。2013年に「自閉スペクトラム症」としてまとめて表現されるようになりました。
自閉スペクトラム症の方によくある困りごと
特に対人場面で困りごとが現れる場合が多いと言われています。
例えば、場の空気を読むことが難しく冗談を言葉通りに受け取ってしまうことがあります。
また、本人が想定していた状況と異なると、混乱してしまうことがあります。
相手の立場に立って考えることが苦手な傾向があります。このため、意図せずに相手を不快にさせるような発言をしてしまい、トラブルに陥る可能性があります。
作業のすすめ方や手順に自分なりのこだわりがあることがあります。こだわりを維持したい気持ちが強く、周囲の人に合わせた行動が難しい場合もあります。
このようなできごとが繰り返されると、失敗体験がかさなってしまうことになります。
その結果、落ち込みや不安、怒りといった感情の困りごとが出現する場合もあります。
また、感覚の敏感さや鈍感さを伴う方もいらっしゃいます。
自閉スペクトラム症の原因
自閉スペクトラム症は生まれもった脳の機能特性が背景にあると考えられています。親の育て方や本人の性格や努力不足が原因ではありません。
このため支援では、環境への働きかけや、困りごとに対する工夫について検討します。自分の特性を良く知り、特性と上手に付き合っていくことを目指していきます。
自閉スペクトラム症の方への支援
以下で、自閉スペクトラム症の方に対する支援をご説明します。
まず、自分の得意なことと苦手なことを整理し、自分の特性理解をします。
その上で、生活場面や職場で困りごとが生じにくくするための工夫を取り入れていきます。
例えば、「見通しを立てることが苦手」な場合、目に見える形でスケジュールを管理することが役に立つかもしれません。
あるいは、「音で気が散って集中できない」場合、イヤーマフなどのツールを活用すると作業が進めやすくなる可能性があります。
対人場面の困りごとについては、社会的スキルの向上を目指します。例えば、ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)が役立つかもしれません。コミュニケーションのすれ違いを防ぐために、適切に意思を伝える方法を検討します。
不安や怒りで困っている場合は、考え方の幅を広げ、感情とうまくつきあっていくことが役立つかもしれません。認知行動療法に基づいたカウンセリングではこうした困りごとの解決に取り組みます。
あいち就労支援センターでは個別のカウンセリングや集団プログラムで自分の特性との付き合い方を考えることができます。当センターにご興味がありましたらぜひ一度見学にいらしてくださいね。
参考文献
- APA (2013). DSM-5. Amer Psychiatric Pub Inc.(高橋三郎他(監訳)(2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院)
- 弘前大学【プレスリリース】https://www.hirosaki-u.ac.jp/topics/49291/