「うつ病と診断され仕事を辞めたけど、再び働けるか不安」
「発達障害で働ける仕事はあるの?」
「障害者就労の仕組みがよくわからない」
といったお悩みはないでしょうか。
この記事では、実際に精神障害の方の就労支援を行っている公認心理師が、精神障害の方が職場で直面する課題や不安について共に考えます。
障害者雇用の説明を通して、新たな視点や就職先を見つけるお手伝いをします。
精神障害を抱える方が感じる不安
精神障害を抱えている方のうち、職場で直面する課題や不安を感じる方は多いです。
社会的な偏見や理解不足、そして自身の能力や価値に対する自信のなさを感じて、就労を継続することに不安を感じる場合もあるでしょう。
以下では、精神障害を持つ方が長く安定して働くためのポイントをお伝えします。
サポート資源の活用で長く安定して働ける
まず、サポートを受けることの重要性が指摘されています。
実際に、精神障害を持つ方が、就労支援機関などのサポート機関の利用なしで就労した場合、1年で半数近い方が辞めているというデータがあります。一方、サポート機関を利用した場合、7割以上の方が1年後も仕事を続けており、サポート機関の利用があると職場定着率が高いことが示されています(図1)。
また、サポートの制度には、就労移行などの障害福祉サービス支援を受けてから働いた方が、就労6か月後から受けられる「就労定着支援」というものがあります。
この「就労定着支援」を利用した場合も、支援を受けない場合と比較して、長く働き続けることができていることがわかっています(図2)。
このように、働く前や働き始めてから支援を継続して受けることで、働く中で生じたストレスに上手に対処して、安定した状態で働き続けられると考えられます。
働く環境を調整する
さらに、長く安心して働くためのもう一つの視点として「働く環境を選ぶ」という考え方があります。
ここでは、障害をもつ方のための雇用制度である「障害者雇用(障害者就労)」という制度をご紹介します。
障害者雇用の仕組み
障害者雇用では、ご自身のもつ症状や特性について、会社から配慮を得ながら働くことができます。
障害者雇用は、障害を持つ方々が自分らしく働くことができる社会を目指して作られた「障害者雇用促進法」に基づいて運用されています。
障害者雇用促進法では、一定以上の規模の会社で障害を持つ方を雇用する義務が定められています。
例えば、従業員数が43.5人以上の民間企業では、従業員数の2.3%の割合で雇い入れをする必要があります(2024年現在)。
この雇い入れの割合は、数年おきに改定されており、年々増加しています。
障害者雇用でも精神障害だと就労しにくい?
障害者雇用では、長く知的障害及び身体障害の方が対象でしたが、
2018年に精神障害を持つ方の雇用も開始しています。
こうした流れから、現在では、精神障害を持つ方の雇用が急速に広がっています。
一方、精神障害の方が働く際の配慮は個々人で大きく異なるため、
企業側にとって「どのように配慮したらいいのかがわかりにくい」という課題がありました。
こうした課題の解決策として、障害を持つ方と企業の双方に支援機関が関わることで、障害を持つ方が適切に配慮を受け、企業側の感じるハードルはできるだけ下げるための取り組みが行われています。
障害者雇用で働くメリット
仕事のミスマッチが少ない
次に、障害者雇用で働くメリットデメリットについて解説します。
障害者雇用では、自分の障害状況に応じた配慮を受けられることがあります。
例えば、通院のためのお休みをもらう、配慮について相談する、仕事量や仕事内容の調整をする、などの配慮があります。
なお、配慮の範囲については、会社の業務内容により様々です。
どのような配慮が可能か、本人および支援機関と会社の担当者が話し合って検討していきます。
実際の就労前に見学や体験実習を実施するケースもあります。
以上のような取り組みをすることで、仕事のミスマッチを減らすことができる点がメリットです。
苦手なことへの個別対応や配慮が受けやすい
また、苦手なことに対して企業が可能な範囲で配慮を受けることができます。
たとえば、以下のような配慮が考えられます。
・集中しにくいので作業スペースをパーティションで区切る
・音が気になるので耳栓の許可をもらう
・他にも疲れやすいのでこまめに休憩を入れる
・通院のために休みを取りやすくする
どのような配慮を受ければ働きやすいかわからない方もいると思います。
その場合、就労移行支援事業所等の相談機関を利用することがおススメです。
周りに障害のことを知られる不安がない
自分の病気のこと伝えることで、職場の人に障害のことがいつか知られるのではないか?という不安を抱かなくてすみます。
なお、障害についてはプライベートな事柄です。
上司や人事課の担当者以外に知られることはありません。
障害者雇用で働くデメリット
職種が限られる
一般枠と比べると、職種が限られていています。
よって、希望する仕事内容をすることが難しくなる可能性はあります。
募集が多いのは、軽作業、簡易事務、清掃などです。
ただ、探し方によっては希望職種がみつかることもあります。
自分に合った求人を探したい方はハローワークの障害枠窓口(専門援助部門)に行ってみるのがおススメです。
一般求人よりも給与が低いことが多い
法律によって、障害者雇用だからという理由で給与を低くすることは禁止されています。
しかし、業務時間や業務量が少ないことで、一般雇用と比較すると給与が低い求人が多いのが現状です。
生活費のため、障害者雇用で働くのは難しいという方もいらっしゃるかと思います。
ポイントとしては、実際に生活費がどれくらいかかるのか計算してみて、少しでも支出より手取り収入が超えることが大切です。
就労継続支援A型B型って?
障害枠求人を検索していると、「就労継続支援A型」の募集も見つかると思います。
就労継続支援というのは福祉制度の枠組みの中で働く制度です。
障害者手帳は制度上は必須ではありませんが、求められる場合も多いです。
一般的な傾向としては、障害枠よりもさらに手厚いサポートが受けられることが考えられます。
就労継続支援A型で働く対象は雇用契約に基づく就労が可能な方です。
週5日4時間以上で働くことが求められ、最低賃金が保証されます。
就労継続支援B型は、対象は就労移行支援を利用したけれども一般就労に結びつかない方、50歳に達している方などです。
決められた勤務日数はなく、週2回からで一日2~4時間など雇用契約は結ばず、もらえる工賃は最低賃金は下回ることが多いです。
このような福祉就労から企業の障害枠・一般枠へステップアップを目指すのも一つの選択肢です。
働き方を決めるには就労移行支援の利用がおススメ!
いかがだったでしょうか。
人それぞれ事情によって、障害者雇用で働くほうが良い方もいれば、一般雇用の方が良い方もいらっしゃるかと思います。
また、フルタイムにするかパートにするか、仕事内容はどうするか、など他にも働き方のお悩みを抱えておられるのではないでしょうか。
精神障害・発達障害を抱えていて社会復帰を考えおられるのであれば、就労移行支援の利用がおススメです。
あいち就労支援センターは、支援スタッフが全員心理学を専門としている就労移行支援施設です。
公認心理師やキャリアコンサルタントが専門的に精神障害の方の症状改善や特性理解、就職活動の支援を行っております。
気になる方はぜひ無料の紹介カウンセリングをご利用ください。