コラム

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指示されたけどよくわからなかったときの心理学

指示されたけどよくわからなかったときの心理学

職場で指示を受ける場面で、「何を言っていたのか途中で分からなくなってしまった」「最初の話と最後の話がつながらない」といった困りごとを感じることがありませんか。あるいは、上司の言葉がどこかあいまいで、具体的にどう行動すればいいか見えてこないこともあるかもしれません。

こうした「指示の受け取りにくさ」は、対人関係の問題というよりも、情報を処理する際の特性と関係していることがあります。たとえば、短期的に情報を保持しておく力である「ワーキングメモリ」の特性や、話の中から重要な点を抽出する力などが影響する場合があります。

ワーキングメモリの負荷と情報の抜け落ち

人は会話の中で、相手の話を聞きながら「内容を一時的に覚え」「意味を理解し」「必要な情報を選んで記憶に残す」という作業を同時に行っています。これにはワーキングメモリが関わっており、この容量には個人差があります。

指示の中に具体的な手順、時間、条件などが複数含まれていると、ワーキングメモリの容量が限られている人にとっては、一部の情報が抜け落ちてしまったり、後から入った情報に前の内容が上書きされてしまったりすることがあります。

また、話し言葉のスピードが速かったり、情報の順序が整理されていなかったりすると、認知的な負荷がさらに増してしまい、聞き取っていても処理が追いつかないこともあります。

あいまいな表現と情報の解釈のズレ

「早めに」「できるだけ丁寧に」「例の件」など、職場では曖昧な表現が使われることがあります。これらの言葉は、話し手にとっては前提や背景が共有されているつもりでも、聞き手には具体的な意味が見えづらいことがあります。

このようなあいまいな指示は、特に文脈から意味を補うことが苦手な人にとっては、混乱や解釈のズレを引き起こしやすくなります。結果として、相手の意図とずれた対応をしてしまい、「話を聞いていない」と誤解されることもあります。

対応の工夫:「聞き返し」と「メモ」の工夫

では、こうした「指示がうまく受け取れない」場面にどう対応すればよいのでしょうか。

まず大切なのは、曖昧な言葉に対して「どのくらいの時間を想定されていますか?」「具体的にはどの資料を使えばよいですか?」といった確認を行うことです。これは質問というより、認識のすり合わせのようなもので、結果的に相手も自分の意図を言語化しやすくなります。

また、「全部聞き終わってから聞き返す」ことにこだわらず、話の途中でも「すみません、ここまででいったん確認させてください」と一度止めて、整理するのもひとつの方法です。話が進んでからまとめて質問しようとすると、前半の内容が抜け落ちやすくなるためです。

メモについても、「話を全部聞いてからまとめる」のではなく、「聞きながらそのまま書く」「箇条書きで断片的に残す」ほうが記憶を補いやすくなります。たとえ書き方が雑でも、あとで思い出すきっかけになるため、話のキーワードを一言ずつでもメモしておくと効果的です。

さらに、指示が終わったあとで「こういう手順で進めれば大丈夫でしょうか」と自分の理解を短く伝え返すことで、認識のズレに早く気づくことができます。これも、聞いていたつもりが「認識が違っていた」というすれ違いを防ぐ有効な手段です。

困りごとを整理し、工夫を重ねる

指示の受け取りがうまくいかないとき、つい「自分の注意力が足りないのでは」と責めてしまうことがあります。しかし、話の構造やスピード、表現のあいまいさなど、受け取りにくさの背景には多くの要因があり、工夫によって軽減できる部分も少なくありません。

完璧に受け取ろうとせず、抜けたら聞き返す、聞きながら書く、最後に確認する、こうした一つひとつの工夫を重ねることで、自分に合った受け取り方を少しずつ見つけていくことができるかもしれません。

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