コラム

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行動を小さく始める工夫

行動を小さく始める工夫

―― 神経発達症の特性と「行動活性化」を日常に生かす考え方

神経発達症の傾向がある人にとって、「やらなければいけないこと」を頭では分かっていても、実際の行動につながらない場面が続くことがあります。

気持ちが弱いわけではなく、意思の問題だけでは説明がつきにくい背景があると考えられています。とくに注意の切り替え、作業の段取り、取りかかりのハードルの高さといった実行機能の特性は、行動そのもののスタートに大きく影響しやすいと言われています。

こうした状況では、「気持ちが整ってから動く」という順序よりも、「少し動いてみることで気持ちがついてくる」という順序のほうが現実的な場合があります。

心理療法の領域では行動活性化と呼ばれる方法があり、うつ病やADHDに関連した研究の中でも、一部の人に役立つ可能性が示されています。

行動活性化は、意欲が自然に湧くことを待つのではなく、小さく行動を始めることで、達成感やリズムが生まれやすくなるという考え方にもとづいています。

日常の中で応用しやすい方法として、「作業を細かい単位に分ける」という工夫があります。作業そのものを一つの塊として扱うと、どこから始めればよいかが曖昧なままになり、頭の中に負荷がかかりやすくなります。

たとえば、レポートを書くことを想像すると、構成、資料、文章の流れなど、多くの要素が一気に頭に入ってきて、最初の一歩を踏み出しにくくなることがあります。

しかし、机に座る、パソコンを開く、タイトルだけ入力する、といった小さい行動に分解すると、具体的で手がつけやすい状態に近づきます。行動のハードルが下がることで、最初の一手が生まれやすくなり、それが次の一歩につながっていくことも多いでしょう。

また、「時間を区切って動き始める」という方法も使えることがあります。

集中が続かないと感じるときでも、五分や十分といった短い時間だけ取りかかると、最初の抵抗感が軽くなる場合があります。タイマーを使って区切ることで、終わりの見通しが立ちやすくなり、途中で気が散ったとしても負担感が増えにくくなります。

短い作業でも、実際に手が動くことで、次に何をするかが整理され、少しずつ全体の流れが掴みやすくなっていきます。

実行機能の特性を考えると、「始めるまでの準備」が負担になりやすいことがあります。

必要な道具がどこにあるか分からない、作業環境が整っていない、といった小さな障壁が重なると、行動の開始そのものが遠のいてしまうことがあります。事前に机の上を整えておく、よく使うものは一箇所にまとめておく、決まった順番で始める流れを作っておくと、負担が少し軽くなり、行動への移りやすさが高まることがあります。

中には、気持ちが落ち込んでいたり、疲労が強く出ていたりすることで、行動のきっかけがさらに見えづらくなる場合もあります。このようなときは、休息や睡眠の調整が必要になることもあります。

行動活性化の考え方では、休むことと動くことのバランスを見直しながら、生活の中に少しずつ活動を戻していくことが重視されます。どちらか一方に偏るのではなく、自分の状態に合わせて調整していく姿勢が大切になるとされています。

行動を少しずつ積み重ねる方法は、一度で大きな成果を得ることを目的にしているわけではありません。

むしろ、小さな行動を積み重ねることで、生活のリズムや構造が整い、時間の把握や気分の安定につながる可能性があります。神経発達症の特性を否定する必要はなく、日々の中で無理のない形で行動の工夫を取り入れていくことで、過ごしやすさを高めるきっかけを作ることができると考えられます。

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