自閉スペクトラム症(ASD)の傾向がある人の中には、「自分が今どういう状態なのか分からない」「考えすぎているのか、足りていないのか判断がつかない」と感じる場面が少なくありません。
こうした状態を理解する手がかりとして、「メタ認知」という考え方があります。
メタ認知とは、自分の考え方や注意の向き、行動の進み方を一段上から捉える力を指します。
たとえば、「今は集中できていない」「ここで混乱している」「情報を詰め込みすぎている」といった状態に気づくことも、その一部に含まれます。ASDの傾向がある人では、目の前の情報処理に負荷が集中しやすく、自分の内側で何が起きているかを同時に把握することが難しくなる場合があります。
この特性があると、疲労やストレスが高まっていても自覚しにくく、結果として無理を続けてしまうことがあります。
また、対人場面でうまくいかなかった理由を振り返ろうとしたときに、「全部自分が悪かった」「相手が全部間違っている」といった極端な理解になりやすいこともあります。これは性格の問題ではなく、状況を整理する視点が持ちにくくなっている状態と考えられます。
メタ認知を補うためには、頭の中だけで整理しようとしないことが重要です。
考えや出来事を言葉にして外に出すことで、「今何に負荷がかかっているのか」「どこでつまずいているのか」を把握しやすくなります。たとえば、出来事とそのときの考えを分けて書き出してみると、事実と解釈が混ざっていたことに気づく場合があります。これは考えを否定する作業ではなく、整理するための手続きとして大切なことがあります。
また、「うまくいかなかった理由」を一つに決めつけず、複数の可能性として扱うことも有効な場合もあります。集中力、疲労、情報量、環境など、要因を分解して捉えることで、自分を過度に責めずに状況を理解しやすくなります。メタ認知は感覚的に身につくものではなく、言語化や記録といった具体的な作業を通じて身についていくことが多いようです。
まとめとして、ASDの傾向がある人にとってメタ認知は、「自分を客観的に評価する能力」ではなく、「自分の状態を扱いやすくするための視点」です。
うまくできないと感じる場面があっても、それは努力不足を意味するものではありません。
もし、考えの整理が難しい状態が続き、生活や仕事に支障が出ている場合には、ひとりで抱え込まず、専門家に相談することも選択肢の1つです。自分の状態を安全に言葉にできる場を持つことが、負担を減らす助けになることもありますよ。