ゴールデンウィークや年末年始、お盆休みなど、大型連休は多くの人にとって「楽しみな期間」でもありますが、自閉スペクトラム症(ASD)の特性がある方にとっては、日常のリズムが崩れやすく、かえって不安や疲れを感じやすい時期でもあります。
普段の生活で決まったスケジュールや行動パターンがある方にとっては、連休中の「予定がない日」や「突然の誘い」「予測できない出来事」は大きなストレス要因になりかねません。
そこで今回は、ASDの特性がある方が大型連休を安心して、自分らしく過ごすためのポイントをご紹介します。
大型連休で困りやすいこと
日常のルーティンが崩れてしまう
平日と違って、学校や仕事が休みになると、決まった起床・食事・活動の時間が乱れがちになります。ASDの特性がある方にとっては、ルーティンが崩れることで気分が不安定になったり、エネルギーを消耗しやすくなることがあります。
具体例
- 寝る時間や起きる時間がバラバラになり、体調を崩す
- 予定がなくて何をしたらいいかわからず、不安になる
- リズムが崩れて連休明けにうまく戻せない
外出や人付き合いの予定が急に入る
家族や友人からの誘い、イベントや旅行など、連休中は普段とは違う予定が入りやすくなります。その「突然の変化」に心の準備ができず、ストレスを感じることがあります。
具体例
- 急な集まりや外出に戸惑ってしまう
- 人が多い場所や騒がしい場所に行くと疲れやすい
- 会話や移動の刺激が多く、家に帰るとぐったりする
自分のペースを保ちづらくなる
周囲の人と過ごす時間が増えることで、「自分の好きなように過ごす」ことが難しくなり、無理に合わせて疲れてしまうこともあります。
具体例
- 家族とずっと一緒にいることで、一人の時間が取れない
- 遊びに行っても、ずっと気を張っていてリラックスできない
- 会話や予定の多さに圧倒されてしまう
安心して過ごすための工夫
ざっくりとしたスケジュールを作る
「何をするか決まっていない」時間が続くと不安になりやすいため、大まかに一日の予定を決めておくと安心感につながります。
工夫例
- 朝起きたらその日のスケジュールを紙に書き出す
- 「10時に散歩」「14時に読書」「17時に夕食」など時間の目安を決める
- 予定がない日も、「自由時間」としてあえてスケジュールに入れておく
毎日続けられるルーティンをいくつか残す
連休中も、普段のルーティンを一部でも続けることで心の安定につながります。
おすすめのルーティン
- 起きる時間・寝る時間を大きくずらさない
- 毎朝同じ飲み物を飲む
- 散歩や軽い運動を取り入れる
- 好きな音楽や動画で一日を始める
外出や人との予定は「事前に確認・共有」しておく
急な誘いや予定変更はストレスになりやすいため、可能な限り事前に内容を把握しておくことが大切です。
工夫例
- 誘いを受けたらすぐ返事せず、「少し考えてから返答する」時間をとる
- 集まる場所や人数、時間などを事前に確認しておく
- 外出先での休憩時間や一人になれるタイミングをあらかじめ作っておく
一人になれる時間や空間を確保する
人と過ごす時間が増えると刺激も多くなります。意識的に「静かに過ごせる時間」を確保することが、リフレッシュや気持ちのリセットに役立ちます。
工夫例
- 部屋の一角に「自分だけのスペース」を作る
- 音や光を抑えた空間で過ごす時間を設ける
- ノイズキャンセリングイヤホンやアイマスクを使って、感覚刺激を減らす
連休明けの準備は「少しずつ」始める
連休が終わってからいきなり元の生活に戻すのではなく、連休中から少しずつ調整しておくとスムーズに復帰しやすくなります
工夫例
- 最後の2〜3日は平日と同じ時間に起きる
- 翌週の予定をカレンダーで整理しておく
- 仕事や学校に持っていくものを前日までに準備しておく
まとめ
ASDの特性がある方にとって、大型連休は「普段と違うこと」が一気に増える時期です。リズムの乱れ、予定の変化、人づきあいの増加など、さまざまな要素が重なることで、疲れやすくなったり、不安を感じたりすることがあります。
ですが、ざっくりとしたスケジュールの作成やルーティンの維持、事前の情報収集、一人の時間の確保など、少しの工夫を取り入れることで、連休をより安心して過ごすことができます。
大切なのは、自分のペースを大切にすること。周囲と同じように楽しめなくても、それは「苦手」なのではなく、「自分らしい過ごし方」があるということです。自分にとって無理のない選択をしながら、心地よい連休を過ごしていけるとよいですね。