自閉スペクトラム症(ASD)では、過去の出来事や未来の予定について繰り返し考え込んでしまう「反すう思考」に陥りやすい傾向があると言われています。このような反すう思考が続くと、不安や抑うつが増幅され、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
しかし、反すう思考には改善策がいくつかあります。この記事では、ASD傾向を持つ場合の反すう思考の原因と、それを和らげるための実践的な方法について解説します。
反すう思考とは?
反すう思考とは、過去の出来事や将来の不確実性について繰り返し考え込むことで、問題解決をするわけでもなく、感情的な苦痛が続いてしまう状態を指します。これは、ネガティブな感情や思考が頭の中でループし、気持ちが落ち着かない状態を引き起こします。
ASDにおける反すう思考の特徴
社会的なやりとりへの不安
「あのときの発言は相手を傷つけたかもしれない」といった対人関係に関する後悔。
予測不能な未来への恐怖
「次の会議で何を話せばよいのか」「予定外のことが起こったらどうしよう」といった未来の出来事への不安。
ASDにおける反すう思考の原因
1. ワーキングメモリの負荷
ASDでは、情報を処理する際の「ワーキングメモリ」の負荷が高くなりやすいことが知られています。これにより、過去の出来事や未来の予定に関する情報が頭の中で整理されにくく、同じ考えが繰り返し浮かんできてしまいます。
2. 過剰な自己分析
ASDの特性として、自分の行動や発言を深く分析する傾向があります。これは自己理解を深める助けになる一方で、過去の出来事に対する批判的な考えが強まり、反すう思考につながることがあります。
3. 感覚過敏の影響
ASDでは、特定の出来事や環境が非常に強い印象を残すことがあります。そのため、感覚的な記憶が繰り返し思い出され、不安感や不快感を引き起こす場合があります。
4. ストレスへの耐性の低さ
ストレスを受けたときにリセットする力が低下しやすいことが、反すう思考を引き起こす一因となることがあります。日常的なストレスが溜まりやすく、それがネガティブな思考のループを強めてしまうことがあります。
反すう思考を和らげるための改善策
反すう思考を減らすためには、自分の特性を理解し、具体的な方法を取り入れることが有効です。以下に、改善策をいくつか紹介します。
1. マインドフルネスを取り入れる
マインドフルネスは、反すう思考を減らす科学的に効果が認められた方法の一つです。現在の瞬間に意識を集中させ、過去や未来の思考から一旦離れることで、心を落ち着ける助けになります。
静かな場所で目を閉じ、呼吸に意識を向けてみましょう。浮かんできた考えを批判せず、「今この瞬間」に戻る練習を続けることで、反すう思考の頻度を減らすことができるかもしれません。
2. 書き出して思考を整理する
頭の中で繰り返される考えを紙に書き出すことで、視覚的に整理しやすくなります。書くことで、同じ思考がループするのを防ぎ、問題点を具体的に捉えられるようになります。
「心配していること」と「現実にできる対策」を2列に分けてリストアップしてみましょう。これにより、解決可能な部分とそうでない部分を切り分けることができ、不安が軽減されることがあります。
3. 行動による切り替え
反すうが始まったとき、身体を動かすことが思考のループを断ち切る効果を持つことがあります。短い散歩やストレッチ、簡単なエクササイズを取り入れることで、思考を切り替えるきっかけを作れます。
反すうが続いていると感じたら、「5分だけ部屋を出て歩いてみる」など、シンプルな行動から始めてみましょう。
4. 専門的なサポートを活用する
反すう思考が日常生活に支障をきたす場合、心理的なサポートを受けることも検討してみてください。認知行動療法(CBT)は、反すう思考の改善に特に効果的とされています。専門家のサポートを受けることで、自分に合った対処法を見つけやすくなります。
まとめ
ASDにおいて、反すう思考は日常的なストレスを増幅させる要因となることがあります。自分の特性を理解し、マインドフルネスや思考の書き出し、行動スイッチなどの方法を取り入れることで、不安や抑うつ感情を和らげることができる場合があります。反すうに悩むときは、自分に優しく向き合いながら、少しずつ効果的な対処法を見つけてみてください。
あいち就労支援センターでは、ASDを持つ方々の反すう思考への対処について専門家がサポートしています。お困りのことがあれば、ご相談してみてくださいね。