身体症状症とは
身体症状症とは、身体の不調が長期間あるにも関わらず、
その症状を説明する決定的な医学的原因が見つからない状態のことを指します。
身体症状症の方は、原因の分からない不調から、症状に過度に注目しやすい状態になります。
医療機関を受診しても原因が見つからず、病院を転々とする方もいます。
身体症状の不調感や病気に対する不安から、仕事や日常生活に支障が出ることもあります。
身体症状症を障害を抱える方にとって、仕事を続けることは大きな挑戦です。
しかし、適切な対策とサポートがあれば可能です。
以下では、専門的な観点から、身体症状症の方が職場で安定して働き続けるためのポイントをわかりやすく解説します。
1. 症状の把握

身体症状症に関連する症状群は、いくつかのタイプに分類されます。以下では代表的なものをご紹介します。
身体症状症
実際の病気はないにも関わらず、身体症状が長期間にわたって続きます。
身体症状は、痛み、吐き気、しびれ、疲労感、胃腸症状など様々です。
そため、絶えず自身の身体症状や健康に関する不安や懸念が生じてしまう状態です。
病気不安症
実際の病気はないか、あってもわずかであるにも関わらず、
重い病気にかかっている,またはかかりつつあるという不安がつきまとう状態です。
身体のことや、病気について繰り返し調べてしまい、日常生活に支障がでてきます。
転換性障害
手足の震えや体の脱力・硬直といった運動機能の症状や、しびれや皮膚感覚の異常、目が見えない・音が聞こえない・声が出せないなどの五感の違和感が生じる状態です。
この症状は、医学的検査では明確な原因が見つかりませんが、運動機能や感覚機能に影響を及ぼします。
2. 自分でできる対処法

身体症状症では、身体の不調を改善しようと必死になることがあるかと思います。
ただ、不調の原因を追究し、完全になくそうとすると、かえって悪化してしまうことがあります。
対処法のポイントとしては、身体の不調との関わり方の幅を広げることです。
以下に対処の例を挙げます。
リラクセーション
身体症状症では、身体に違和感のある所に注意が向きやすくなります。
リラクセーションを通して、注意を症状以外の所に向け、体を休めることができます。
リラクセーションの一つとして呼吸法があります。
静かな場所で背中を伸ばし、4秒かけて息を吸い、4秒間止めます。
次に、ゆっくりと4秒かけて息を吐きます。
この呼吸を数回繰り返すことで、心が落ち着いてきます。
これ以外にも、自分がリラックスできる方法があれば試してみるのがおススメです。
身体の不調への考え方を広げる
身体症状症では、つい「この体の違和感は病気に違いない」
「重大な病気で放っておくと大変になる」と考えてしまいます。
症状について調べたり、何か所もの病院へ行ったりすることもあると思います。
身体の不調への考え方を広げることで、体の違和感に必要以上に囚われることが少なくなります。
具体的には、最初の考えとは、別の考えを出してみることです。
例えば、最初に「またきっとおなかが痛くなる。外に出ることができずに何も活動できなくなる。」
という考えが浮かんだとします。
一方で、別の考えとして「おなかが痛くなるかもしれない。でも近くに出かけるくらいの活動はできるだろう。」
と考えられるかもしれません。
別の考えを出しても納得できないことも多いかと思います。
ただ、少しづつ練習していくことで、考えの幅が広がることが期待できます。
やりたいことに目を向ける
身体に不調や痛みがあると、「症状があるから活動できない、まずは症状を改善しないと。」
と考えがちになります。
症状について調べたり、何か所もの病院にかかることで、一時的に不安が下がるかもしれません。
ただ、症状を改善しよう、なくそうとしすぎて、本来やりたかった活動が減ってしまうことがあります。すると、長期的には、生活の充実度が下がってしまいます。
このような場合、目的を「症状の軽減」から、「やりたい活動の幅を広げること」に変えていくことがポイントです。
身体の痛みや違和感はありながらも、なくそうとはせず、そのままにしておきます。
自分の考えや気持ち、感覚をそのまま観察して受け止める、というマインドフルネスを取り入れるのもひとつです。
そのうえで、本来やりたかった活動の幅を少しづつ広げていきます。
痛みがありつつも、大切な活動が増えることで生活の充実度が上がることが期待できます。
3. 働き方の工夫

職場環境を適切に調整することで、身体的および心理的な負担を軽減できることがあります。
身体の痛みなどで肉体労働が辛い場合は、室内でできる仕事が向いていると考えられます。
また、在宅勤務や短時間勤務、フレックスタイム制など、柔軟な働き方を検討してみるのもいいかもしれません。ストレス対処のための時間が取りやすいことで心理的な負担が軽くなることが期待できます。
4. 専門家のサポート

症状が改善しない場合や、仕事との両立が難しい場合は、専門家のサポートが必要となることもあります。
サポートを受けることで、症状の軽減や安定、自分に合った働き方を見つけることに繋がります。
まずは、精神科医やカウンセラーに相談し、適切なアドバイスや治療を受けることをおすすめします。
まとめ
身体症状症を抱えながら仕事を続けることは、難しさがあります。
しかし、適切な対処や職場選びをすることで、安定した働き方を実現することが可能です。
また、周囲の理解とサポートが重要であることを忘れずに、必要なときには支援を求めましょう。
あいち就労支援センターでは、身体症状症の方の就労支援を行っています。
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