コラム

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感情がうまく言葉にできないときはどうすればいい?

感情がうまく言葉にできないときはどうすればいい?

――自閉スペクトラム症傾向のある方にとってのヒント

新しい環境に入ったとき、予想外の出来事が起きたとき、自分の中にさまざまな感情が生じることがあります。しかし、その感情をうまく言葉にできない、もしくは感情自体がよくわからないということはないでしょうか。これは自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある方にとって、比較的よく見られる困難です。

感情がうまく言葉にできない背景

ASD傾向のある方は、「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれる特性をあわせ持つことがあります。これは、自分の感情に気づきにくく、またそれを他者に伝える言語表現が難しい状態を指します。ASD傾向のある人のうち、50%以上がこのアレキシサイミアの傾向を示すとも言われています。

この状態では、「なんだかモヤモヤする」「疲れている気がする」といった漠然とした不快感が続きやすくなります。結果として、周囲に自分の状態をうまく伝えることができず、誤解を招いたり、ストレスが蓄積したりすることがあります。

どうすれば感情を言葉にできるのか

まず必要なのは、自分の身体感覚に注目することです。感情はしばしば身体的な反応として現れます。たとえば、「胸が締めつけられるような感じがする」「お腹のあたりが重たい」といった感覚です。これらの感覚に気づき、それがどのような感情と結びついているのかを少しずつ学んでいくことで、感情を把握する手がかりが得られます。

また、感情語彙のリストを利用する方法も効果的です。「不安」「苛立ち」「虚しさ」などの具体的な感情の言葉をあらかじめリスト化しておき、それを見ながら「今の自分に一番近いものはどれか」を選ぶ練習を繰り返すことで、感情とことばの対応関係が育っていきます。

書き出すという手段

人に話すのが難しいと感じる場合には、紙に書くという方法があります。ノートでも、スマートフォンのメモアプリでも構いません。自分の感覚、出来事、それに対する反応を書き出してみることで、頭の中が整理され、言葉にならなかった感情が少しずつ輪郭を持っていきます。特にASD傾向がある方は視覚的な情報処理を得意とすることが多いため、書き出した文字を見ることで理解が進みやすい傾向があります。

信頼できる相手とのやりとり

すぐに会話で説明できなくても、信頼できる相手に「いまはうまく言葉にできないけれど、少し時間をください」と伝えるだけでも、自分の状態を守ることができます。感情の表出がうまくいかないこと自体を責める必要はなく、むしろ「言葉にできない感情がある」という事実を認めることが出発点になる場合があります。

おわりに

ASD傾向のある方にとって、感情を言葉にすることは簡単ではないかもしれません。しかし、身体感覚への注目、語彙の拡充、書き出す作業といった方法を通じて、少しずつ自分の感情を理解する力を育てることができるようになります。日々の生活の中で、小さな積み重ねを意識することが、将来的に人とのやりとりを楽にし、自分の心の健康を守ることにもつながります。

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