社会復帰に関する不安
復職や再就職など、社会復帰をする際は誰でも不安になりますよね。
「休職していた自分のことを、周囲はどのように思っているのか」
「新しい職場でも、前の職場と同じ目に遭うのではないか」
「就職先が決まらなかったらどうしよう」
「ブランクがあるから心配」「体力に自信がない」など・・・。
一方で、「必要以上に不安になり、社会復帰への一歩を踏み出せない」という方はいませんか?
このコラムでは、不安症の方の社会復帰の不安を解消する方法についてご紹介します。
不安症(不安障害)とは
不安症とは、不安の過剰さが日常生活で支障をきたしている状態のことです。
代表的な不安症には、社交不安症、パニック症、全般不安症などがあります。
それぞれの疾患には、以下のような特徴があります。
社交不安症
・人前で何かをするときに「恥をかくのではないか」「拒絶されるのではないか」
「迷惑をかけてしまうのではないか」などと過剰に心配してしまう
・不安な気持ちから、人とかかわる場面を避けてしまう
パニック症
・何の前触れもなく、突然激しい不安に見舞われる(パニック発作)
・心臓がドキドキする、汗をかく、息苦しくなるなどの身体症状、
自分がどうにかなってしまうことや、死ぬことに対する恐怖などが生じる
・再びパニック発作に見舞われるのではないかと不安になり、
いざというときに逃げられない場所を避けてしまう
全般不安症
・仕事などのさまざまなことに対する過剰な不安が6か月以上続く
・心配しすぎだとわかっていても、コントロールすることが難しい
・落ちつきのなさ、疲れやすさ、集中力の低下、怒りっぽさ、眠れないなどの症状を伴い、
本来やるべきこと(仕事など)に取り組めない
これらの症状により、社会復帰が怖くなってしまっている方は少なくありません。
では、不安症の方は社会復帰のために何をすればよいのでしょうか。
社会復帰の不安の解消法
不安についての自己理解を深める
まずは、不安についての自己理解を深めることが大切です。
例えば、どのような場面で、どのようなことを考えて不安になっているのか。
不安になると、どのような症状が出現し、どのような行動をとってしまうのか、
どこに注意が向きやすくなるのかなどです。
例えば社交不安症のAさんは、「自分が会議で発言すると馬鹿にされる」と考えています。
会議で急に意見を求められると、頭が真っ白になって冷や汗をかき、うつむいてしまいます。
Aさんは不安のメカニズムを整理し、「うつむいて話すと周囲の反応を確かめることができず、
余計不安になっている」ということに気づきました。
また、パニック症のBさんは、通勤中の電車で突然パニック発作に見舞われ、
会社に行くことができなくなりました。
「電車に乗ると、いざというときに助けを求められない」と考えているためです。
不安な場面に慣れていく
不安は時間の経過とともに薄れていきます。
しかし、不安な場面を避けてしまうと、「避けているから安心」→「避けないと不安」
という思考に陥り、かえって不安が強まってしまいます。
そのため、不安な場面にあえて直面し、不安が自然に和らいでいくのを体感したり、
「思ったより大丈夫だった」という経験を積むことが大切です。
復職を目指している方は、あえてスーツ ( 仕事着 ) を着てみる、
会社に行くつもりで図書館に行ってみるなど、不安が高すぎないことから
少しずつチャレンジしてみてもいいかもしれません。
また、当センターでは、採用面接の練習ができるプログラムを実施しています。
個別担当と1対1で、面接練習をすることも可能です。
再就職を目指している方で、採用面接に不安がある方は、
まずはセンター内で練習をしてみることもおススメです。
不安になったときの対処法を身につける
不安になったときの対処法を身につけておくとより安心です。
比較的試しやすいリラックス方法として、「腹式呼吸」があります。
鼻から息を吸って、口から大きく息を吐き出す・・・を繰り返す方法です。
不安になると呼吸が浅くなったり速くなったりしますが、
あえてお腹を使ってゆっくりと大きく呼吸することで、副交感神経を優位にし、
緊張や不安を和らげることができます。
当センターでは、「リラックスのコツ」というプログラムを実施しており、
高まりすぎた心身の緊張をほぐす方法を一緒に練習していきます。
詳しくは以下のコラムをご参照ください。
最後に
あいち就労支援センターでは、カウンセリングやプログラムを通して、
不安症の方の社会復帰のサポートをさせていただくことが可能です。
また、復職・再就職が決まった後も、継続して支援をご利用いただけます。
社会復帰が怖いと感じている方は、ぜひ初回カウンセリングにてご相談ください。
うまく話せなくても大丈夫です。
スタッフ一同、皆様の社会復帰を心より応援しております。
参考文献
・APA (2013). DSM-5. Amer Psychiatric Pub Inc.(高橋三郎他(監訳)(2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院)
・厚生労働省. 2016. パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)
・厚生労働省. 2016. 社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)