異常気象のニュースを目にしては胸がざわつき、スマホで気候変動の情報を検索し続けてしまう。猛暑の日にエアコンをつけることすら「環境に負担をかけているのでは」と罪悪感が残る。
このような気候変動や環境の悪化を考えたときに生じる不安や悲しみ、怒り、無力感は、「気候不安」ともいえます。現時点では、気候不安そのものが独立した精神疾患として診断されるわけではありません。
なぜニュースを見ると不安になるのか
気候変動は、想像の中だけにある危険ではありません。
世界保健機関は、気候変動がメンタルヘルスに関わる社会的、環境的、経済的なリスクを強めると指摘しています。そのため、気候変動を知って不安になることは、現実の問題に対する理解可能な反応でもあります。 一方で、「自然な反応だから我慢すればよい」とも限りません。
心配しながらも普段の生活を続けられる状態から、何度もニュースを確認して眠れない、仕事や勉強に集中できない、将来を考えると何も始められない状態まで、気候不安の表れ方には幅があります。
不安の内容だけでなく、生活にどの程度影響しているかを見ることが大切です。
不安をやわらげる「情報の取り入れ方」
不安が強いときには、情報を完全に避けるのでも、見続けるのでもなく、触れ方を調整します。
信頼できる情報源を一つか二つに絞り、確認する時刻を決めましょう。
寝る前に災害の映像を繰り返し見ているなら、夜は通知を切る方法もあります。これは問題から目をそらすためではなく、必要な情報を受け取れる状態を保つための工夫です。
自分ができる行動と向き合うヒント
また、心配ごとを「今日、自分でできること」「人と一緒ならできること」「今は自分で変えられないこと」に分けてみましょう。
防災用品を確認する、職場や学校の暑さ対策について話す、地域の活動に参加するなど、自分にとって意味のある行動を一つ選びます。誰かと取り組むことは、人とのつながりや「一緒に動けている」という感覚につながる可能性があります。
ただし、不安を減らすために、もっと環境に配慮した生活をしなければならないと考えすぎると、行動そのものが新しい負担になります。
気候変動は社会制度や産業、地域、国際社会を含む大きな課題です。一人の生活習慣だけで解決できるものではありません。休むことや普段の生活を楽しむことは、問題を軽視することとは違います。
つらさが続くときの振り返りとケア
困ったときはどうしたらいいでしょうか。
まずは、不安を消そうとするより、「自分は気候変動の何を心配しているのか」「情報に触れたあと、生活にどんな変化が出ているのか」を振り返ってみてください。
不眠や食欲の低下、強い絶望感が続くときや、仕事、学業、家事への影響が大きいときには、気候不安という言葉にこだわらず、現在の症状について医療機関や専門家に相談することが大切です。
参考資料
- WHO(2022)Mental health and Climate Change: Policy Brief
https://www.who.int/publications/i/item/9789240045125 - IPCC第6次評価報告書・第2作業部会「政策決定者向け要約」
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/chapter/summary-for-policymakers/ - Stanley et al.(2023)気候不安の連続性に関する研究
https://online.ucpress.edu/collabra/article/9/1/67838/195120/The-Continuum-of-Eco-Anxiety-Responses-A - Cosh et al.(2024)気候変動とメンタルヘルスに関する系統的レビュー
https://link.springer.com/article/10.1186/s12888-024-06274-1