コラム

COLUMN

発達症のある子どもの就労と自立につながる家族の関わり方とは?

公開日:
発達症のある子どもの就労と自立につながる家族の関わり方とは?

「成人した子どもが、この先どのように働いていけばよいのか不安」

「仕事を始めても長く続かず、本人も自信を失っているように見える」

「親として支えたい気持ちはあるけれど、どこまで関わるべきかわからない」

このような悩みを抱えている家族は、どのようにご本人に関わればよいのでしょうか。

発達特性のある方が社会の中で自分らしく生活し、働き続けていくためには、ご本人が自分の特性を理解すること、そして周囲がその特性に合った関わり方や環境を考えることが大切です。

特性があることは、仕事ができないことを意味するものではありません。得意なことや力を発揮しやすい環境を知ることで、自分に合った働き方を見つけられる可能性があります。

発達特性のある方の就労で大切なのは「できないこと」だけを見ることではありません

発達特性のある方は、生活や仕事の中で困難を感じる場面がある一方で、特定の分野で高い集中力や能力を発揮することもあります。

例えば、仕事の場面では次のような特徴が見られることがあります。

  • 予定変更や急な対応に戸惑いやすいが、ルーティンをこなすことが得意
  • 複数の作業を同時に進めることが難しいが、一つ一つ順番に進めると正確な作業ができる
  • 周囲の人が自然に理解しているルールを読み取ることに苦労するが、教えてもらったルールには従うことができる
  • 興味にムラがあるが、興味のある分野には深く集中できる

家族がお子さんの困っている姿を見ると、「できるようにしなければ」と考えることもあるかもしれません。

しかし、働く力を育てるうえで大切なのは、苦手なことをすべてなくすことではありません。

自分の特徴を知り、困りやすい場面ではどのような工夫が必要なのかを考えることが、自立への準備になります。

成人した子どもの自立を支えるために家族が意識したい関わり方

成人したお子さんを支える家族にとって、「どのように関われば本人の成長につながるのか」という悩みは多いものです。

これまで生活を支えてきたからこそ、困る前に助けたい、失敗しないように準備してあげたいと思うこともあるでしょう。

ここでは、家族の具体的な関わり方をご紹介します。

子どもの困りごとを一緒に整理する

仕事が続かない、生活リズムが乱れる、人間関係で悩むなどの問題が起きたとき、表面だけを見ると「本人の努力不足」と感じてしまうことがあるかもしれません。

しかし、困りごとの背景にはさまざまな理由があります。

例えば、仕事が続かない場合でも、

  • 仕事内容が本人の得意分野と合っていない
  • 疲れやストレスに気づきにくい
  • 職場でのコミュニケーションに難しさがある
  • 生活リズムが安定していない
  • 失敗経験から自信を失っている

など、原因は一つではありません。

まずは「なぜできないのか」ではなく、「どの場面で困っているのか」を一緒に確認してみましょう。

困りごとを具体的に整理することで、必要な支援や工夫が見つかりやすくなります。

本人の気持ちや希望を大切にする

家族は、お子さんの将来を考えるからこそ、「安定した仕事についてほしい」「できるだけ困らない生活を送ってほしい」と願うものです。

その気持ちは、お子さんを大切に思っているからこそ生まれるものです。

ただ、働く本人が納得できる選択をすることも、自立には欠かせません。

例えば、家族の方から見ると向いていないように感じる仕事でも、ご本人にとっては興味ややりがいを感じられる場合があります。

また、ご本人の同意を得ないまま、職場や支援機関に相談したり、話を進めたりすることは避けましょう。

そんなときはまず、「どうしたい?」「どんなサポートがあると安心?」と、ご本人の気持ちや希望を聞くことで 、納得できる方法を探しやすくなります。

大切なのは、正解を一方的に決めることではなく、ご本人の考えを聞きながら一緒に方法を探していくことです。

失敗を責めるのではなく、次の工夫につなげる

仕事や生活の中では、誰でも失敗やつまずきを経験します。

発達特性のある方の場合、過去の失敗経験から「自分にはできない」と感じ、自信を失ってしまうことがあります。

そのようなときは、失敗そのものだけを見るのではなく、「次にどうすればよいか」を一緒に考えてみましょう。

例えば、

  • 予定を忘れてしまった場合は、予定表やスマートフォンの通知を活用する
  • 仕事の指示が混乱しやすい場合は、メモや確認方法を決めておく
  • 疲れに気づきにくい場合は、休息の時間をあらかじめ確保する

できなかった経験を「失敗」で終わらせず、「自分に合う方法を見つける機会」と捉えることが大切です。

自分の特性を知ることが、働き続ける力につながります

就労に向けた準備では、仕事の技術を身につけることだけではなく、自分自身を理解することも重要です。

「自分はどんな環境で力を発揮しやすいのか」

「どのような場面で困りやすいのか」

「困ったときにはどんなサポートが必要なのか」

こうした自己理解が深まることで、自分に合った仕事や働き方を考えやすくなります。

当センターでは、ご本人のお困りごとに合わせて、以下のような内容を一緒に整理していくことができます。

  • 得意なことや苦手なことの整理
  • 仕事で困りやすい場面の確認
  • 働くために必要な生活習慣の見直し
  • 職場で必要になる配慮の整理
  • 本人に合った働き方の検討      等

特性を理解することは、自分の可能性を狭めることではありません。

自分らしく働くための方法を探すための大切な一歩になります。

就労支援を活用することで、働く準備を段階的に進められます

発達特性のある方が仕事を探すとき、「就職先を見つけること」だけを考えてしまうことがあります。

しかし、安定して働き続けるためには、仕事の内容だけではなく、生活リズムや体調管理、人との関わり方など、さまざまな準備が必要になります。

就労支援では、就職先を見つけることだけを目的にするのではなく、その方が自分に合った働き方を考え、長く働くための力を身につけるサポートを行っています。

当センターでは、ご本人の状態や目標に合わせながら、次のような取り組みを行っています。

  • 生活リズムを整えるためのサポート
  • 仕事に必要な基本的なスキルの練習
  • コミュニケーション方法を学ぶ機会の提供
  • 自分の得意なことや苦手なことを整理する支援
  • 就職後の困りごとへの相談対応      等

また、「働きたい気持ちはあるけれど、何から始めればよいかわからない」という方も多くいらっしゃいます。

そのような場合も、現在の状況を整理しながら、無理のない目標を一緒に考えていくことができます。

大きな目標だけを見るのではなく、「朝決まった時間に起きる」「外出する日を増やす」「人と話す練習をする」など、小さな段階を積み重ねることが、働く準備につながります。

発達障害のある子どもの家族が就労支援を利用するときに知っておきたいこと

お子さんの将来を考える中で、「本人が支援を受けることに抵抗を感じている」「親から勧めても聞いてくれない」という場合もあります。

支援を利用するかどうかは、ご本人の気持ちも大切にしながら考える必要があります。

まずは、「支援を受けることは特別なことではなく、自分に合った方法を探すための手段の一つ」と考えてみましょう。

例えば、仕事を探すときにハローワークや求人サイトを利用するように、自分に合った働き方を見つけるために専門的なサポートを利用することも選択肢の一つです。

家族の方ができることとしては、無理に利用を勧めるよりも、お子さんが困っていることや希望していることを聞くことが大切です。

「何に困っているのか」

「どんな働き方なら続けられそうか」

「どのようなサポートがあれば安心できるか」

こうした会話を重ねることで、ご本人が自分の将来について考えるきっかけになります。

発達特性のある成人した子どもを支えるとき、家族だけで抱え込まないことも大切です

お子さんの自立や就労について考える中で、家族自身が不安や疲れを感じることもあります。

「親としてもっと何かできるのではないか」

「将来、子どもが一人で生活できるのか心配」

「周囲に相談できる人がいない」

このような気持ちを抱える方も少なくありません。

家族だからこそ気づけることがある一方で、家族だけでは見えにくい部分もあります。

心理師や就労支援の専門職に相談することで、ご本人の特徴や現在の状況を整理し、新しい視点を得られることがあります。

また、家族も安心して相談できる場所を持つことも大切です。

子どもの特性を理解することが、その人らしい働き方を見つける第一歩になります

発達特性のある方が自立して働くために大切なのは、周囲と同じ方法でできるようになることだけではありません。

自分の特徴を知り、自分に合った環境や方法を見つけることが、安定した生活や就労につながります。

家族にとって、お子さんの将来を考えることは、期待だけでなく不安も伴うものかもしれません。

しかし、特性を理解することは、お子さんの可能性を広げるための大切な取り組みです。

得意なこと、苦手なこと、安心して取り組める環境、必要なサポートを少しずつ整理していくことで、ご本人らしい働き方が見えてくることがあります。

当センターは、ご本人とその家族が安心して将来を考えられるよう、一人ひとりの特性や希望を大切にした支援を行っています。

働くことや自立について悩んだときは、家族だけで答えを探そうとせず、心理師や支援機関への相談も活用しながら、一緒に方法を探していきましょう。

引用元・参考文献

・厚生労働省「発達障害者支援施策」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hattatsu/index.html

・厚生労働省「障害者の就労支援について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html

・厚生労働省「こころの情報サイト 発達障害」

https://kokoro.ncnp.go.jp

・American Psychiatric Association. (2022). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). American Psychiatric Association Publishing.

コラムのご利用にあたって

当サイトのコラムは、こころの不調や働き方に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療方針を示すものではありません。

ここケアワークスは医療機関ではないため、診断や薬の処方は行っていません。強い落ち込み、不眠、食欲低下、希死念慮、自傷の不安、仕事や生活への大きな支障が続く場合には、主治医や心療内科・精神科などの医療機関にご相談ください。

監修者

原井 宏明

原井クリニック院長 / ここケアセンター 顧問医

医師、精神保健指定医、精神科専門医・指導医(日本精神神経学会認定)、専門行動療法士(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法師(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法スーパーバイザー、認定動機づけ面接トレーナー(MINT認定)

プロフィール
原井クリニックHP

相談予約

RESERVATION

初回相談は無料となっております。
まだ継続利用を考えていないという方もぜひお気軽にご相談ください。

予約する

お問い合わせ

CONTACT

ご不明点や資料請求などは
こちらからお気軽にお問い合わせください。